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すぐに役立つ会社法の知識 “新会社法”について、やさしく解説いたします。経営者必見! 1. 会社法は、商法の大改正ですか?
■会社法? 何ですか会社法という名称(なまえ)の法律ができました。何時できたかというと、2005年に国会(第162回通常国会:1/21~6/19 会期延長~8/13)で審議され、同年の7月に公布されました。ところで「公布」とは、法律が効力を発揮する「施行」と違います。公布とは、「成立した成文の法を公表して、一般国民が知ることのできる状態に置くこと をいい、法令が現実に拘束力を発生するためには、一般に公布の用件をみたすことが必要」 とされています。つまり、公布とは予告にあたり同法律の施行は,会社法附則で施行期日が「公布の日から起算して1年6ヵ月を超えない範囲内において政令で定める日」と規定されていたはずです。では実際にどうなったかというと、「会社法の施行期日を定める政令(3月29日公布)」により、会社法の施行日が平成18年5月1日に決定されました。

冒頭だけでも大分ややこしいですね。本コラムは、法律がテーマです。どんなに易しく書いてもポイントだけは抑えなければなりません。法律は「知らなかった」では基本的に済まされません。また、施行日などの適用要件がひとつ違っても白黒の判定が逆になることがあります。
会社の社長(代表取締役)や役員(取締役)は、本人が好まなくてもこれからお話しする会社法や商法(商売のための法律)に準拠する必要があります。では、勉強を進めましょう。

会社法を勉強する前にひとつ確認しておきたいことがあります。それは会社というものが、「法律によって団体に与えられた人格(法人格)」だということです。そしてその団体は、法人格を取得することで、財産所有や契約などの法律行為を、団体の名義で行うことができるようになります。株式会社を始めとする法人格には、それを規定する法律があり、これを法人の根拠法と呼びます。株式会社の根拠法は、2006年4月いっぱいは「商法」で5月1日以降は、会社法ということになります。

難しい言い回しをしましたが要は「株式会社は、会社法によって存在を認められた団体」ということになり、会社は会社法を守らなければならないということです。例えはこの会社法の中に「株式会社は、決算公告しなければならない」(会社法440条)と記されていたり、しかもそれを怠ると「100万円以下の過料に処す」(会社法976条)と明示されていたりします。多分この法律は、ほとんどの株式会社で守っていません。私が調べて範囲では、株式上場(公開)をしていない会社の90%以上が法律違反をしていることになります。というのは、現行商法でも株式会社には決算公告の義務が課せられています。会社法でもこの点は変わっていません。「社長さん、これからも法律違反を続けますか?」ということも本コラムのテーマのひとつです。 ■会社法は、初名称なのに「新」会社法と呼ばれます「会社法」は、新しい法典でありながら「新会社法」と、わざわざ「新」を付けた呼ばれ方をすることがあります。本来「新会社法」と呼ばれるからには、「旧会社法」がなくてはならない訳ですが、日本にはこれまで「会社法」という法律はありませんでした。しかし、「会社法」という名称の法律はなかったのですが「会社関連法律」または「会社関連法制」と呼ばれる会社を規定する一連の法律があったため、新法典でありながら「新会社法」と呼ばれるようになったようです。

会社法は、商法第2編の内容や有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)等において各々バラバラに規定していた「会社関連の法律」を、ひとつの法典としてまとめたものです。そもそも現行の商法は、明治32年に制定された法律を基に何度も何度も改正を加えパッチワークのような法律になっていました。また、法律の文体も漢字とカタカナ交じりの古いものです。さらには、経済の国際化に伴い近年は改正の頻度も高く、時代に即した法律の編纂が望まれていました。

会社法の制定にあたり法制審議会は、法案の概要を以下の通り説明しています。経営者などの実務家の方にとっても法律改正の肝となる部分ですので、一読願いたいものです。
会社法案の概要:国会議事録より 本案は、最近の社会経済情勢の変化に対応するために会社に関する各種制度を見直すとともに、これを現代用語の表記にし、分かりやすく再編成する措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
  • 1.会社に関する各種制度の体系的かつ抜本的な見直し
    • (1)株式会社と有限会社を新たな会社類型として統合することにより、現在有限会社としてしか認められていない、取締役の人数規制や取締役会・監査役の設置義務のない株式会社を認めるものとすること。
    • (2)最低資本金制度を見直して、現在一千万円以上の出資が必要とされている株式会社の設立時の出資額規制を撤廃するものとすること。
    • (3)合併等の組織再編成に関する手続を整備し、株主・債権者の保護を図りつつ、機動的な組織再編を実現しようとするほか、機関設置等における定款自治の範囲の拡大等を行うものとすること。
    • (4)株主代表訴訟において、原告株主が株式交換等で株主たる地位を失っても一定の場合には原告適格を失わないこととするなど株主代表訴訟制度を合理化するものとすること。
    • (5)公認会計士・税理士の資格を持つ会計参与が取締役と共に計算書類を作成する会計参与制度の創設、会計監査人を設置することができる会社の範囲の拡大等の措置を講ずるものとすること。
    • (6)出資者の全員が有限責任社員であり、内部関係については組合的規律が適用される新たな会社類型の新設を行うものとすること。
    • (7)株式の譲渡制限に係る定款自治の拡大、自己株式の市場売却の許容、会社に対する金銭債権の現物出資に係る検査役の調査の省略、株主に対する利益の還元方法の見直し、委員会等設置会社とそれ以外の会社の取締役の責任に関する規定の調整、大会社における内部統制システムの構築の義務化等の改正をするものとすること。
  • 2.会社法制の現代語化
    片仮名・文語体の表記を平仮名・口語体に改めるとともに、会社法制についての規定を一つの法典としてまとめ、分かりやすく再編成するものとすること。
  • 3.施行期日
    この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
会社法制定のポイントは、法文を口語体とし分かりやすくまとめたことと、「会社に関わる諸制度間の規律の不均衡の是正」および「社会情勢の変化に対応するための各種制度の見直し」を行った、という点にあります。 ■新会社法が施行されたといっても慌てる必要はありません新会社法の制定を、従来の“会社関連法律の改正”(改正商法)という捉え方と、“新法の制定”という異なった捉え方をすることができます。前者の改正商法と捉えると、有限会社の廃止や組織再編制度の改定など前述の「会社法案の概要」ととおり大きな変化が幾つもあります。しかし、“新法の制定”という観点でこの会社法を捉えますと、従来からあった会社関連法律、特に近年度々改正されている商法の延長に位置づけられるもので、大した違いは無いともいえます。その意味において、あまり慌てる必要はないものといえます。

従って新会社法への対応は、企業統治(コーポレート・ガバナンス)や事業再編(合併や会社分割など)、資本戦略(増資や株式公開など)に係る特別な目的や計画がある場合において、同法の施行に対する研究や急いだ対応を必要とします。具体的に会社の置かれた状況における対応については、当コラムで順次解説したいと思います。

会社法の施行に伴って「会われる必要はない」とは言っても冒頭のとおり法は守らなければならないルールです。特に商法がパッチワークの迷路のようになってしまったために一部に現実に即さないルールを内在させていました。そのため、法はあるものの現実を優先し、一部のルールについて違法性の検査をせずに黙認していたものがあります。その特徴的なものが、株券の発行と決算公告義務といわれています。
会社法は、現実を踏まえた法律編纂をしたといわれています。このことを勘案すると、新法の施行に伴い遵法性の検査(違法行為の摘発等)、例えば決算公告義務違反などがこれまで以上に厳格化される可能性が高くなると想定できます。
現状において会社に関する法規定である商法等は、小規模会社に対して遵法性の検査が甘く運用されていることから、これまで違法摘発や処罰が極めて少なかったとの批判が少なくありません。会社法の施行によって慌てる必要がない一方で、現状の商法を初めとする会社関連法律に則った(コンプライアンス)会社運営を心がける必要があります。実は、その意識が最も大切な会社法対応といえるような気がします。 ■新会社法の概要表1の通り、新会社法では、有限会社が無くなり株式会社という規格に統合されます。現行法では4種類(株式会社、有限会社、合資会社、合名会社)あります会社定義を、有限会社を株式に統合し、新たに合同会社を加えた分類となります。このうち合名会社、合資会社、合同会社の3種類は、株式会社と区分する名称として持分会社と総称されます。合同会社は、日本版LLC(Limited Liability Company)といえるもので、きわめて柔軟な自治経営を行うことができる形態として注目を集めています。

新会社法において有限会社を廃止し(現行の有限会社は存続可能)株式会社に統合した背景には、現状における株式会社の規模や経営(組織)形態のばらつきの多さがあったようです。株式会社の中には、売上で10兆円を超える企業がある一方で、株主も社員も親族だけという小さな事業も少なくありません。小さな会社にいたっては、取締役3名以上という規定をクリアするため名目上の取締役を置くケースが散見されました。このような会社は、現行法において有限会社を想定していたが、社会の評価や認知を気にして株式会社を選択することが多く、新会社法でこれの実態に法が合わせた形となっています。

新会社法では、株式会社を規模の大小と株式公開の有無の2軸(2×2=4、大会社の公開会社など)で区分し、会社の実態に合わせ、さまざまな機関(株主総会や取締役会などの意思決定や経営監督の機関)設計を可能なものとしました。特に中小会社の株式譲渡制限会社(株式未公開会社)については、経営の実情に合わせ次のような簡易な会社運営を可能とした、特徴を持っています。
  • 取締役会を置かなくてもよい
  • 監査役を置かなくてもよい
  • 最低資本金(現行は、株式会社は1,000万円以上(168条)、有限会社は300万円以上(有9条))を設けない
  • 定款により取締役の任期を10年まで延長できる
  • 類似商号を厳格にチェックしない
これらにより、現状の中小企業の実態に合わせた経営体制が可能となり、現行の有限会社と同様の簡易な機関設計の株式会社を選択できるようになりました。
【表1】
現行の会社関連法の体系
(商法第2編、有限会社法、商法特例法)
会社の形態 会社の特徴
株式会社 種類:(円、以上を略記)
・大会社(資本金5億上又は負債総額200億上)
・中会社(資本金1億上かつ負債総額200億未満)
・小会社(資本金1億下かつ負債総額200億未満)
最低資本金:1000万円
株主の責任:有限責任(出資の範囲)
会社の機関:総会+取締役会+監査役(会)
※または、委員会等設置(大会社に限り任意選択)
取締役会の書面決議:不可
議決権等特段の定め:置けない 決算公告義務:あり
有限会社 最低資本金:300万円
会社の機関:取締役1名以上、取締役会・監査役なし、取締役の任期なし
議決権等特段の定め:定款に置くことが可能 決算公告義務:なし
合資会社 合資会社(無限責任社員と有限責任社員が混在)
合名会社 合名会社(無限責任社員のみより構成)
【表2】
新会社法
会社の形態 会社の特徴
株式会社 種類:
・大会社(資本金5億上又は負債総額200億上)
・大会社以外の会社(上記以外の中小会社)
・株式譲渡制限会社(すべての株式が譲渡制限)
・公開会社(株式譲渡制限でない会社)
最低資本金規制:なし
機関:会計参与など柔軟性のある設計可能。
特に、譲渡制限会社は自由な機関を選択可能。
(1)総会+取締役会+監査役
(2)総会+取締役会+会計参与
(3)総会+取締役会+監査役+会計参与
(4)総会+取締役
(5)総会+取締役+監査役
(6)総会+取締役+会計参与
取締役及び会計参与の任期は原則2年、監査役の任期は原則4年。ただし、譲渡制限会社は定款により最大10年まで延長可能。
取締役の員数は、取締役会を置かない場合は1人以上、置く場合は3人以上。(譲渡制限株式会社のみ取締役会を置かない機関設計の選択が可能)
取締役会の書面決議:可能
議決権等特段の定め:可能(譲渡制限会社のみ) 決算公告義務:あり
持分会社 (合名会社、合資会社、合同会社) 合名会社・合資会社を一本化 (有限責任社員がいない合資会社=合名会社)
合同会社:(新設) 出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係については組合的規律が適用される新たな会社類型(日本版LLC)
有限責任事業組合(LLP) 組合出資者の有限責任を確保する民法組合の特例制度
■会社法の活用(株式会社の新設、起業)新会社法の最大級の特徴は、株式会社を作りやすくなったことです。次に示すとおり、最低資本金制度が撤廃されるなど、少ない資金で起業できるばかりでなく、従来と比べ株式会社の創業は極めて簡易になりました。
  • 最低資本金制度の撤廃
    ・・少ない資金で会社設立できる
  • 商号規制の緩和
    ・・類似商号チェック手続きの廃止(同一住所は不可)により従来よりも自由な商号を使える(ただし、著名な商号は保護対象)
    ・・会社の目的(定款上)について、従来よりも記載基準が緩和し包括記載が認められることから起業しやすくなる
  • 登記手続き規制の緩和
    ・・銀行等の払込金保管証明が不要となり残高証明等で可能となる(発起設立の場合)
    ・・従来は資本金を一定期間銀行に置いた上で払込金保管証明を得たうえで、これを添えた登記手続きが必要だった
  • 会社の機関に関する規制の緩和(中小会社+一部、株式譲渡制限会社)
    ・・取締役は一人でも良い
    ・・監査役はいなくても良い
    ・・取締役の任期を10年まで延長できるため登記手続きを頻繁に行わなくても良い
以上のように新会社法には、起業奨励策とでも呼べる「さまざまな案」が盛り込まれています。この背景には、起業促進による経済活性という国家の意思を感じることができます。1990年代以降の米国の好景気は、年間約50万社の起業が原動力となっているという見解もあります。50万社の起業の裏では、約40万社の倒産・廃業があるようです。しかしそれは経済の新陳代謝であり、創業にも廃業にも経済活動が付いてまわります。加えて、約10万社がネットで増加していることも大きな経済効果があることは間違いありません。 ここ数年間の日本における会社数の増加は、経産省を中心としたさまざまな起業促進策があったにもかかわらずほぼ横ばい状態が続いています。新会社法を活用した、株式会社や合同会社(日本版LLC)の積極的な創業が望まれています。また、日本版LLCと似たイメージの、日本版LLP(有限責任事業組合)もありますが、これは会社法の範疇ではなく、民法組合を発展させたものです。政府は、このLLPによる創業も経済復興の一策としたいようです。 ■日本版LLP(有限責任事業組合) 法務省が「新会社法」を国会に提出している一方で、経済産業省は、「有限責任事業組合制度に関する研究会」で日本版LLP(Limited Liability Partnership)を創設させました。新会社法の中に、日本版LLC(Limited Liability Company、出資者全員有限責任の人的会社)がありながら、別法として日本版LLPがあるのも違和感のある話です。これは、LLPが「民法上の組合」のカテゴリーに入ることから、会社(法人格)ではないとの判断に起因しているようです。
LLPは、英米等において会計事務所や法律事務所、デザイン事務所、IT産業等で「組織運営が非常に自由な共同事業体」として幅広く活用されている制度です。日本はこれらを参考にし、組合出資者の有限責任を確保する民法組合の特例制度として立法したようです。 ■日本版LLPの特徴 出資者全員の有限責任:出資者は出資金の範囲で責任を負う。
内部自治の徹底:組織内部の取決めは自由に決められる。即ち、株主総会や取締役会等を設ける必要は無い。
柔軟な損益配分:労務やノウハウの提供による各自の事業への貢献度に応じて、出資比率と異なる柔軟な損益分配を行うことが可能。
構成員課税(パススルー課税):LLPには課税されず、その出資者に直接課税。

経産省が主導する日本版LLP制度と、新会社法による「合同会社(日本版LLC)」は、ほぼ同じ特徴を有する制度ですが、LLCは法人格を有することから、国税庁の見解として税務上の取扱いに差異が出てきます。
現行の法人税法では、「法人格を有する団体には法人課税を行う」という原則があります。この原則を変更しない限り、LLC(合同会社)に構成員課税(パススルー課税)が適用されません。何故なら、合同会社(日本版LLC)はあくまで商法上の会社であり、商法上の会社は全て法人格を有するからです。

日本版LLPは、現行税制でも構成員課税を行なっている「民法上の組合」(法人格を有さない)をベースとして、「有限責任事業組合」の法制化を行いました。ただ、日本版LLPには、租税回避防止のために一定の仕組みが組み込まれています。先ず、組合員の損益分配の割合は、総組合員の同意により別段の定めをした場合を除き、各組合員の出資の価額に応じて定めるものとし、本来自由であるべき損益の分配に一定の制限を課しました。また、出資者の共同事業への参加(業務執行の決定には、原則として総組合員の同意が必要)を義務付けています。これは、民法組合制度を利用した租税回避行為の典型例であるレバレッジド・リース(出資額を大きく上回る借金をして、航空機や船舶を購入し減価償却費を分配して、損益通算を行うことで節税効果をあげる)に類する利用を回避するための措置です。このようなケースでは、大多数の出資者は資金を出すだけで経営に参加していないことから、平成17年度の税制改正で、①組合員所得に関する計算書の提出、②出資額を超える組合損失は必要経費や損金に算入しないこととなっています。
しかし日本版LLPは、「総組合員の同意による別段の定めがあれば」自由な損益分配が可能であり、また、パススル-課税も適用されることから、さまざまな事業形態の創業を経産省は期待しているようです。経産省では、日本版LLPを産業活性の一助とするためさまざまなLLP活用ケースを自省のWebサイト(http://www.meti.go.jp/)に掲載しています。経産省のWebサイトは、巨大な情報量のため簡単にはLLPに関する情報をゲットすることができないかもしれません。そんな時には、サイト内検索というブラウザの機能を活用するといいでしょう。 ■新会社法によって混乱する「会社の信用」 新会社法によって、容易に株式会社を設立できるというメリットが生まれます。また、資本金の極めて少ない会社や役員ひとりの会社への組織(機関)変更もできます。この変化をチャンスと捉えると、積極的な事業運営や戦略的な経営改革が可能です。しかし一方で変化には、チャンスという側面と同時にピンチ(危機)という側面も併せ持っていることにも注しなければなりません。
容易に株式会社を創業できるということは、悪意を持った者による「安易な創業」も可能にしているということです。小額な現金取引から近づき、徐々に信用度を高め債務を大きくしたところで倒産や夜逃げをして債権回収を逃れる取り込み詐欺(パクリ屋)などの犯罪グループの仕事が新会社法によって、しやすくなると考えられます。商号規制も緩和されることから、新規の取引にはこれまで以上の注意を必要とするでしょう。

このように新会社法の施行によって、多くの会社が新規取引先の信用力に注意を払うようになるはずです。これは、これから市場を開拓し成長しようとする企業にとっては、見過ごすことのできない経済慣習の「一大変化」と考えなければなりません。なぜなら、自社の信用性や正当性をこれまで以上に開示しなければ、市場から排除されかねないからです。この対策として、決算公告の実施を勧めます。現行の商法においても新会社法においても、株式会社には決算公告の義務が課せられています。しかし、現状では遵法性の検査がほとんどないことや罰則規定の適用が甘いことから、90%以上の会社が決算公告をしていないといわれています。新会社法の施行によって間違いなく、決算公告の実施を最低条件としながら、積極的な財務情報の公開が信用力のアピールに役立社会情勢となりました。 ■コンサルタント(会計事務所等)の活用 会社を設立し、継続的に運営していく上で、司法書士や税理士などのさまざまなマネジメント・サービスを活用する機会が多いはずです。新会社法の施行でこのマネジメント・サービスの活用のあり方がどのように変化するのか考えてみます。
新会社法(案)の骨子を概観するだけでも、規制緩和と手続きの簡略化の方向に進んでいることを読み取ることができます。手続きの簡略化が進むということは、専門家(プロ)でなくいわば誰でも手続きできる、その範囲が拡大するということに他なりません。加えて、各省庁を頂点とする様々な行政機関は、インターネット(Webサイト)や行政窓口を通じて、申請書類の公開や申請手順のアドバイスを実施しています。これらを活用することによって、専門家(プロ)に依頼したり依存したりすることなく、自ら株式会社やLLC、LLPの設立や組織再編を行うことができるのです。

では、専門家(プロ)を活用する必要や機会が激減するのかというと、そうではなく、使い方が代わるということです。これまでのように、手続きが煩雑だったり面倒だったりするからその作業代行として専門家(プロ)を使うのではなく、これからは変化への対応や戦略的意思決定のアドバイザーやコンサルタントして専門化(プロ)を活用します。規制緩和によって自由度が増すということは、目標達成の選択肢が増えるということです。経営者は、経営の方針や事業構想を専門家(プロ)に伝え、その課題達成の最適案を専門家(プロ)から意見として入手します。最終判断は経営者がするものとしても、専門家(プロ)のアドバイスによって課題達成の確立は格段に上昇します。専門家(プロ)を事務代行や作業代行として利用する時代は、プロの側からも利用者側からも、もうそろそろ終わりにしたいものです。
2. 決算公告義務
■社長さんへの提言 この項で先ず申し上げたいのは「社長さん! コンプライアンスなどは気にせずに、成り行きで経営していませんか?」という問いかけです。その象徴が、会社法(商法)が規定する「決算公告」にたいする義務違反です。2006年の早春に、ホテル経営を成功させたことで著名なある経営者が「時速60キロ制限の道を67~68キロで走ってもまあいいかと思っていた」と法令違反にも開き直ってみせた行為が社会の猛反発を受けました。この結果、同氏が受ける社会的な損失には計り知れないものがあります。

日本の株式会社数は、120万社といわれています。他に有限会社が約160万社。他に会社や法人といわれるものには、合名会社や合資会社があり、さらにNPO法人、社団・財団、学校などの公益法人、道路公団などの特殊法人、国民生活センターなどの独立行政法人などを含めることもあります。
ここでは、法人の種類を伝えることが趣旨ではなく、株式会社の社長(代表取締役)さんの仕事について提言したいのです。株式会社も有限会社も「法人」と呼ばれます。法人は、われわれ自然人である人間とは異なり、法律よって社会的な存在が認められる「団体」であり「人格」でもあります。会社の根拠となる法律(根拠法)によって存在を認められています。その法律は、株式会社は商法で有限会社は有限会社法などでしたが、今般これらを元に新たに「会社法」が成立し、来年2006年5月(ごろ)に施行されます。

やや理屈っぽい言い回しとなりましたが、要は株式会社の社長さんの仕事に直結する新法=「会社法」ができた、ということです。新法というとこれまでになかった法律が新たにできるというイメージですが、これまで商法や有限会社法、証券取引法等でばらばらに規定していた会社に関する法律を「会社法」という新しい法典として整備した、というのがより実態に近いイメージです。

この新法の施行を通して、経営者の課題が2つほど見えてきます。ひとつは、株式会社の根拠法である商法(現行法)について経営者として充分な理解をしているだろうか、ということ。今ひとつは、法律が変わることへの準備や対策をしなければならないということ。この2点は、何れも経営者としては、見逃せない重要な課題といえます。そんなこともあり、2006年2月現在、多くの出版社から「会社法」に関する本がおびただしいほど出版されています。機会を作って、近くの本屋に行ってビジネス書のコーナーを覗くと良いでしょう。本屋に行くのが面倒ならばWeb本屋(amazon.co.jpなど)で「会社法」を検索しても良いかもしれません。200タイトルを超える書籍がヒットするはずです。

現行根拠法(商法、会社法)の理解と新会社法への対応という2つのテーマのうち、どちらを優先課題とすべきか? この解は明確で、経営者は現行根拠法である商法の理解を深めることを優先すべきです。なぜなら、今を知った上で改正点を知る方が問題の核心を把握しやすいからです。更にこれまで、小さな会社はあまりにも商法を蔑ろにして経営をしてきたという反省もしなければなりません。商法を蔑ろにしたことは、社長さんだけが悪いわけではありません。法律を取り締まる側の行政にも、問題があったといわざるを得ません。(旧)商法が、やや規模の大きな株式会社を想定していたため、商法に準則しない行為(違法行為)に対して取締りを甘くしていた感があります。中小零細な株式会社のほとんどが違法行為もしくは実体の伴わない形式的な所作であっても、摘発や処罰を受けることがなかったのは、事実です。本来、法を守るべき経営者も「赤信号みんなで渡れば怖くない」というような感覚で違法行為を繰り返してきた、といえます。新会社法の施行により、このいい加減なシステムは崩壊する、と賢い社長さんならば考えるべきです。

ここで改めて経営者の方にお尋ねします。株主総会と取締役会は、商法に準則して実施していますか? 商法の趣旨に則った形で、この2つの機関と監査役は機能していますか? 経理会計は、税理ではなく商法に準じた処理をしていますか? 会社の決算は、公開する義務が課せられていますが、速やかに決算公告していますか? これらのことは、司法書士や税理士などの専門家と言われる先生方に任せ切の社長が多いはずです。しかし、ここで良く考えてほしいのです。経営責任は当然ながら経営者(社長さん、取締役)にあり、ひとたび違法行為の摘発となれば、処罰の対象となるのは、専門家の先生方ではなく取締役の皆さんです。ライブドアの堀江社長の例を出すまでも無くその代表が、社長さんです。専門家の先生方は、手続きの代行者であるとみなされています。特段の契約が無い限り、あるべき経営を受任することは稀なことです。

会社設立をしたことのある皆さんに、思い起こして欲しいことがあります。誰かと次のようなやり取りをしませんでしたか?
「会社の設立ですね。株式ですと、役員は3人以上必要です。何方か居ますか? 監査役も必要ですね。必要な書類としては○○○です、○○○までに用意してください。どのような事業ですか? 今お伺いしたことを元に、定款やら議事録やら設立に必要なものの原案はこちらで作成しますので」こんなやり取りです。
会社設立の事態は、このような具合にプロフェッショナルに、かつ事務的に進んだはずです。決算公告についても、顧問税理士等から強く勧められたり、指導されたりしたケースは少ないはずです。少し穿った解説をするならば、この国の士業(専門家)は、縦割りで他の専門領域をできるだけ侵さない、という倫理観を持っています。いやな言い方をするならば、金(料金)にならないことには手を出さない人たちが多いともいえます。しかし、専門家に文句を言う前に、経営者としては自ら学ぶべきだった、と反省することが大切です。

確かに、経営者が学ぶべき領域は広過ぎるともいえます。このテーマの商法に限らず、人を雇用するなら労働関連法を、税法や業界法も、マーケティングや戦略論も学ばなくては、一流の経営者にはなりえないというのでは大変なことです。しかし、やり方がないわけではありません。経営者の皆さんは、これらの経営テーマの骨格や核心だけを掴めば良いのです。その上で、専門家を適時に利用し、取締役会を通じて取締役や従業員を活用します。本来、社長業とはこのようなもののはずです。社長が成り行きで会社を経営していたのでは、確かな成長は望めません。新会社法の施行と、多くの会社が決算公告を実施することが時代の分岐点になると考えています。 ■会社法で企業会計はどう変わるのか 商法第32条2項に「商業帳簿の作成に関する規定の解釈については、公正なる会計慣行を斟酌すべし」と規定されています。この商法で規定する“公正なる会計慣行”とは何なのか? “斟酌すべし”とはいかなる態度を求められているのかということです。
多くの中小企業における会計の実態は、法人税法を拠り所としながら、その他の事務については一般的な簿記会計の経験によっています。しかし、法人税法は会計基準(指針)ではありません。むしろ、法人税法そのものが公正妥当な会計処理によって作成された「確定決算」を前提として成り立っているものです。また、“斟酌すべし”という表現においては、強制法規である商法に相応しくない「曖昧な表現」といわざるを得ませんでした。

この点が新会社法では、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」とされ、相応に具体的なものとなりました。これを受ける形で「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」とは如何なるものなのかを具体付ける基準の統一化に向けて、いくつかの動きがあります。この動きを理解するためには、商法改正の履歴を少し遡って説明する必要があります。

平成14年の商法改正で、官報や日刊新聞による決算公告に代えて、インターネットのホームページ上で可能となりました。この改正時点での衆参両議院では、以下のような付帯決議がなされていることに着目する必要があります。
「株式会社の大多数を占める小規模会社においても、計算書類の公開の制度趣旨が十分に理解され、その実施が図られるようその趣旨の周知徹底を図るとともに、この制度を定着させるための環境整備に努めること。加えて、今後計算関係規定を省令で規定する際には、証券取引法に基づく会計法規等の適用のない中小企業に対して過重な負担を課して経営を阻害することのないよう必要な措置をとること」とされました。

会社法制を形骸化させている代表的な要因が「計算書類、すなわち、決算書の公告・開示の不履行」であり、これを改めることと、中小会社における適法かつ適正な会計の品質向上は、一体をなす事柄として当時から認識されていたことなのです。新会社法、第431条の「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従う」によって商法の“斟酌すべし”は“従うものとする”へと変化したのです。

では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」どのように規定されてきたのでしょうか。
2002年6月発表の中小企業庁の「中小企業の会計に関する研究会」を契機として、日本税理士会連合会「中小会社会計基準」(2002.12)や日本公認会計士協会「中小企業の会計のあり方に関す研究報告」(2003.6)と会計に係る各界から研究成果が発表されました。
これ等の研究は、2005年3月22日に設置された「中小企業の会計」の統合に向けた検討委員会(財団法人財務会計基準機構)によって、統一化に向けて動き出しました。この検討委員会は、企業会計基準委員会(ASB)から2名、日本税理士会連合会と日本公認会計士協会から、それぞれ3名、そして日本商工会議所から1名で構成されています。またこの委員会には、オブザーバに中小企業庁・金融庁・法務省を迎えて、基準化・統一化に向けた検討がなされました。

その成果は、2005年8月に「中小企業の会計に関する指針(以下『本指針』)」として発表されました。「本指針」によれば、その目的は、中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示し、中小企業に、本指針に拠り計算書類を作成することを推奨すること、としています。とりわけ、会社法施行後における会計参与を設置する未上場の中小会社が、計算書類を作成する際の統一的な拠り所となることが明白です。

本指針においてしばしば、“指針”や“望ましい”“推奨”といった曖昧とも受け取れられかねない表現が使われていますが、これに惑わされてはなりません。これ等は、日本の企業会計基準の先輩格である企業会計原則や、上場企業が準拠する証取法の財務諸表規則に配慮した表現となっていると考えるべきものです。「一国にもう一つの基準、すなわち、ダブルスタンダード」はありえないという原理原則から導かれた表現方法といえるのです。
しかし現実には、中小企業がその数において圧倒的なメジャーです。その実態を踏まえて、中小企業のための会計基準として生まれたのが、「本指針」といえます。従って、「本指針」は、今後の決算公告に適う適法な決算の基準となることは言うまでもありません。 ■会計の原則と決算公告 株式会社の会計を会社法が規定する目的は、会社の財政状態及び経営成績に関する情報を株主と会社債権者へ提供することにあります。会社法の第431条「会計の原則」では、従来の商法における“公正なる会計・・・”という表現を“一般に公正妥当と認められる会計・・・”に改正し、企業会計の適法な慣行の幅を広げました。2006年2月においては、企業会計の慣行となるべきものとして「中小企業の会計に関する指針」を想定しながら、一方で商法が“斟酌すべし”としていた記述を“従うものとする”に改正し、適法な会計のあり方についても明示しました。

また、同法の第432条「会計帳簿の作成及び保存」においては、「適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」として、適時性・正確性についても明文規定がなされました。さらに、2005年11月28日に発表された「株式会社の計算に関する法務省令案」では、(会社法)第435条「計算書類等の作成及び保存」で、規定する計算書類について、貸借対照表、損益計算書に加えて、計算書類に株主資本等変動計算書と「個別注記表」が求められることが明らかにされたのです。この「個別注記表」が計算書類として規定されたこと、更にそれらの注記が、計算書類の公告の対象となったことは、従来の税務会計中心でやってきた多くの中小企業にとって、決算の実務において大きな影響をもたらすと考えられることから、事前の対策や検討が必要となります。

ただし、株式会社の計算に関する法務省令82条には、注記の省略に関する規定が設けられています。「公開会社でない株式会社」は、下表に示す「個別注記表」のうち5と9を除く注記事項の全部又は一部を省略することができます。決算公告についても、同様に省略できることになります。ここでいう「公開会社でない株式会社」とは、すべての種類株式について譲渡制限をしていない株式会社のことで、俗に言う「株式上場をしていない会社」のことではありません。

この注記省略規定があることで、会社法を「甘い法律」と考える向きもありますが、会社法に共通した特徴として「規定の選択性の幅の広さ」があります。この任意選択性に、個々の株式会社の意識レベルや取り組みの水準の高低を示す重要なポイントが隠されています。選択の余地のない義務(規定)ならば、進んで法を犯そうとする会社以外は規定に従うことになります。任意性ゆえに、外形的に会社間のレベルに差が出てくるのです。

「個別注記表」が、企業会計の計算書類のひとつとなったことは、それらのすべてを計算書類として表現するか、どこを省略するかはあっても、中小企業の経理会計の実務に大きな影響を与えます。何故ならばこれまでの「税務会計」においては、会計にとって重要事項であるところの「財産評価方法」とか、「会計基準の選択」とか、貸借対照表に関する注記が蔑ろにされてきた歴史があります。
【「個別注記表」で要求する注記事項】
注記事項 注記内容
1. 継続企業の前提に関する注記
  • (1)当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
  • (2)継続企業の前提に関する重要な疑義の存在の有無
  • (3)当該事象又は状況を解消又は大幅に改善するための経営者の対応及び経営計画
  • (4)当該重要な疑義の影響の計算書類(連結注記表にあっては、連結計算書類)への反映の有無
2. 重要な会計方針に係る事項(連結注記表にあっては、連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項)に関する注記
  • (1)資産の評価基準及び評価方法
  • (2)固定資産の減価償却の方法
  • (3)引当金の計上基準
  • (4)収益及び費用の計上基準
  • (5)その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項
3. 貸借対照表等に関する注記
  • (1)資産が担保に供されている場合における次に掲げる事項
  • (2)資産に係る引当金を直接控除した場合における各資産の資産科目別の引当金の金額
  • (3)資産に係る減価償却累計額を直接控除した場合における各資産の資産科目別の減価償却累計額
  • (4)資産に係る減損損失累計額を貸借対照表おいて減価償却累計額に合算して減価償却累計額の科目をもって表示した場合にあっては、減価償却累計額に減損損失累計額が含まれている旨
  • (5)保証債務、手形遡求債務、重要な係争事件に係る損害賠償義務その他これらに準ずる債務(負債の部に計上したものを除く。)があるときは、当該債務の内容及び金額
  • (6)当該株式会社の親会社株式の各表示区分別の金額
4. 損益計算書に関する注記 損益計算書において販売費及び一般管理費について主要な費目に細分しなかった場合における販売費及び一般管理費の主要な費目及びその金額とする。
5. 株主資本等変動計算書に関する注記  
6. リースにより使用する固定資産に関する注記  
7. 税効果会計に関する注記  
8. 持分法損益等に関する注記  
9. 関連当事者との取引に関する注記  
10. 一株当たり情報に関する注記  
11. 重要な後発事象に関する注記  
12. その他の注記  
経理会計の現場においては、決算公告と注記表を的確に意識することによって、経理(会計)の役割に大きな変化生まれます。取引結果を簿記的に事務処理することが中心だった業務から、会社の経営成績や財政状態を適切に外部に表すという会社の信用を左右するコンプライアンスの本丸というべき業務へと大きく変貌します。決算公告に対して一部の経営者から、“見せたくない”、“面倒だ”という意見を聞きます。そのような発想から見れば、「個別注記表」は一番に省略したいものかもしれません。しかし、決算公告と注記表は、企業の継続を前提としたものであり、当該会社との取引の安全性を担保するものです。この点から個別注記は、決算公告の内容を正々堂々と説明するための、重要で意味あるものといえます。
3. 電磁的な決算公告(制度)
2002年4月の改正商法において、会社関係書類の電子化並びに電磁的方法による議決権行使、電磁的方法による決算公告といった会社法制に関するIT化についての制度が定められました。これらは、急速に進むIT社会に、会社法制を対応した制度改正といえます。本項においては、電磁的な決算公告の制度化について解説します。 ■決算公告義務とは 株式会社は、定時株主総会での計算書類の報告または承認後、遅滞なく決算公告を行わなければなりません。公告内容は、貸借対照表またはその要旨であり、商法特例法上の大会社については、損益計算書またはその要旨も必要となります。決算公告の方法は、官報または日刊新聞紙への掲載です。会社が公告をなす方法は、定款によって定めます。(2002年4月の改正前の商法) ■決算公告のIT化 2002年4月の改正商法において、決算公告のIT化として従来の決算公告制度自体は変更せずに、代替的な手段である「一定の電磁的方法」による決算公告が新設されました。この一定の電磁的方法による場合には、従来の決算公告を行わなくてもよいこととなっています。 一定の電磁的方法によるためのポイントは、以下のとおりです。
  • ・従来の決算公告に代えて、電磁的方法で行う旨の取締役会決議があること
  • ・公告内容は、貸借対照表(商法特例法上の大会社は損益計算書を含む)であること
  • ・公告内容は、定時株主総会日後5年を経過するまで開示すること
  • ・情報を受けるために必要な事項(情報が開示されているホームページのアドレス)を登記すること
従来の決算公告に代えて電磁的方法を採用するには、取締役会決議で事足ります。したがって、会社が公告をなす方法に係る定款変更や、電磁的方法で行う旨の株主総会決議等は必要ありません。また、従来の決算公告では貸借対照表等の代わりにその「要旨」を公告することが認められていましたが、電磁的方法では貸借対照表等そのものを開示する必要があり、「要旨」は認められていません。さらに、電磁的方法では5年間掲載し続ける必要があります。 ■その他の法定公告 商法(会社法)において会社には、決算公告以外にも、合併公告、解散公告、資本減少公告、組織変更公告、株式交換公告、新設分割公告、吸収分割公告、株券提出公告、名義書換停止公告等の法廷公告を行うことが定められています。2002年4月の商法改正では、これらの法定公告については、電磁的方法によることは認められず、従来どおり定款によって定められた方法で公告する必要がありました。
しかし、2005年2月の商法改正において「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律」の施行によって、これまで官報か時事に関する日刊新聞紙に限定されていた公告方法に加え、インターネットを利用して決算公告以外の法定公告を行うことができるようになりました。
以上のように、少し厄介な話ですが、電磁的な方法による決算公告と法定公告の「電子公告」は、別なもの(制度)です。本書で扱っているテーマは、決算公告であり、その公告方法として電磁的な方法であるホームページの活用です。
4. 会計とは何か(会計の役割と透明会計)
会計とは経営そのものを表現したものであって「経営と一体なもの」とする考えがあります。類似する発想ですが「会計は企業の成長に極めて有効な『武器』となり得るもの」とする考えもあります。また会計は「経営戦略の立案や執行に不可欠な情報ツールである」との考えもあります。これ等の意見や発想は、会計と経営の関係を前向きに捉えたものと評価できます。
一方で、会計に対する現実的な認識には、次のように会計をやや疎ましいものと考える向きも少なくありません。
「会計は、会社として果たさなければならない義務でありどちらかというと余分な仕事である」、あるいは「税を算出する上で必要な作業である」「資本家(主)に対する義務だ」といった、会計を経営改善の契機と捉えるのではなく、義務や作業とするマイナスイメージの考えです。

以上の何れの考え方があり、なかなか日本では会計に関する共通認識が定着しているとは言い難い状況です。しかしながら近年、コンプライアンス浸透の必要性が喧伝されながら、しかもこれに違反する経済事件が何件か立て続けに起きました。米国のエンロン、ワールドコム事件に続き、日本でも西武鉄道・コクドグループやカネボウ、ライブドアなどの不正経理事件が起きている中で、さすがに会計を軽視し蔑ろにした経営はあり得ないという認識が浸透しはじめているといえます。ここに列挙した事件は、何れも大型の事件であり大ニュースといえるものです。ところが現実には、株式会社を舞台とする数多くの経済事件が起きています。これまでの枚挙にいとまがないほどの事件から解ったことは、株式会社という事業形態が必ずしも「善なるもの」でないということが顕になりました。

株式会社は、資本金(資本家)を広く集め、取締役に経営を委任します。資本家も取締役も有限責任(範囲)で経営を展開します。株式会社制度は、資本主義社会の申し子であり、大ヒット施策といえます。それまでの制度(システム)に比較して大革命といっていいほどの変化でした。「有限責任」という近代経済史における大転換が、不特定多数の資本家から巨額の資本を従来にない規模で調達することを可能にしました。この制度なしには、経済の発展はやはり望めないところでしょう。株式会社というシステムに資本主義自体がはらむリスクを膨張させる可能性があったとしても、このシステムが資本主義社会の推進エンジンであることに変わりがありません。

有限責任という特権を持つ株式会社という事業形態と、会計は切っても切れない関係にあります。株式会社が正当なものとして社会(株主や取引先といったステークホルダーなど)から認知されるためには、会計制度に沿ったレポートがなされる必要があります。経営者(取締役)は、資本家からの資金の受託者としての責任を果たすとともに、資金の運用成果を資本と利益とに分別し、レポートする必要があります。従って会計とは、事務作業的な計数の処理技術ではないということを認識していただきたいのです。 ■会計の機能と役割 会計の目的は、経済活動の結果を貨幣的数値として記録し、その結果を第三者に報告することです。また、会計行為には、記録行為と報告行為の2つがあるといわれています。会計の記録行為とは、企業のひとつひとつの取引を一定のルールのもとに認識して、貨幣的な数値として測定し、それらを複式簿記という記録システムによって、組織的に会計帳簿に記録する行為です。一方、会計の報告行為とは、記録にもとづく会計帳簿を基礎として、会計制度に則って貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成し公表できるようにすることです。

また会計をその機能性で分類しますと、財務諸表に記されたデータに基づく意思決定の有用性を重視する「情報提供機能」と、利害調整を主目的とする「会計責任履行機能」に分けることができます。この2つの機能は、対立関係として捉えるのではなく、現実の企業においては、情報提供機能も会計責任履行機能も共に不可欠なものと捉えていただきたい。 ■情報提供機能 資本主義(市場経済)社会の進展の中で、株式会社という制度を誕生させ、資本と経営の分離による事業運営システムを発展させてきました。この状況における会計の主たる機能は、投資意思決定に有用な情報の提供にあると考えられています。投資家をはじめとする企業の利害関係者の経済的意思決定に役立つ情報を提供することが、会計の存在意義であるという考え方が、多数の会計学者や企業家の支持を得ています。現在、会計の情報提供機能を重視する考えは、会計制度に大きな影響を与え、新たな会計基準づくりの動機となっています。 例えば、年金債務のオンバランス化、特定の有価証券に対する時価評価などといった、新たな会計基準が導入されています。従来、原則的に取得原価主義をもって一元的になされていた資産評価が、新基準の導入により、部分的にではあったにしても時価主義による評価がなされることとなりました。

また会計の情報提供機能の社会的意義は、健全で効率的な資本市場の繁栄とその支援にあります。外部報告会計は、社会基盤の共通言語としての役割を期待されています。現代の資本主義社会における会計には、公共財としての役割が求められているといえます。 ■会計責任履行機能 会計には前述の情報提供機能と別に、会計責任の履行に関する機能も求められています。ここでいう会計責任とは、財産の所有者がその管理を第三者に委託したとき、所有者(委託者)と管理受託者の間に財産の委託と受託の関係が成立し、受託者は、委託者に対して財産管理責任を負う、という考えです。この際に財産管理の受託者は、財産管理責任の行為の結果を受益者に対して報告する義務を負います。この報告義務も会計責任ということができます。
資本と経営の分離のもとでは、財産の所有者たる資本主が、自らの財産を出資し、その管理を第三者である経営者に委託します。この状況においては、資本主と経営者の間で財産の委託と受託の関係が成立しています。この関係において経営者は、資本主に対して、会計責任を負うことになります。

会計の2つの機能を対比すると現在では、情報提供機能が重視されています。現在では、会計の会計責任履行機能は、情報提供機能に従属する機能とみなされることが少なくありません。たとえば、FASB(米国、財務会計基準審議会)によれば、財務報告の基本目的を次のように位置づけています。

投資および与信意思決定に有用な情報の提供
キャッシュフローの見込額をあらかじめ評価するのに有用な情報の提供
企業の資源、かかる資源に対する請求権およびそれらの変動に関する情報の提供
上記目的に付随するものとして、受託責任や会計責任の遂行についての情報提供
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