税理士のあんてなステーション HOME > 会計事務所の皆様へ > 特別対談 森永卓郎 VS 太田孝昭
- IT化に代表される社会の大きな変革期の中、大企業から中小企業・個人に至るまで、厳しい構造的な変革を迫られている。それは会計事務所も決して例外ではない。常に業界をリードし続けてきた太田孝昭が、会計事務所の生き残りを賭けたビジネス戦略を提唱。
そのプロジェクトが今まさに動き始めた。
経済アナリストの森永卓郎が、あんてな社の太田会長にその夢と抱負を聞く。 

- 太田・・・いつもテレビでお顔を拝見、ラジオでお声を聞いております。早速ですが今、会計事務所を取り巻く環境は、大変、厳しいものです。顧問料の低下、税理士法人による大型化、営業の規制緩和、自計化の進展、JSOXなどの対応、会社法の改制、それに伴う税法の改制等、従来では予想もしないような変化に見舞われております。これらは会計事務所を自由に競争させ、強いところが生き延びるというアメリカ型社会を会計・税理業界に持ち込むという、政府の方針にほかなりません。 今、全国に会計事務所がどのくらいあるか、森永さんはご存知ですか。
- 森永・・・さあ、どのくらいでしょうか。正確には把握しておりませんが……。
- 太田・・・全国に約3万の会計事務所があると言われています。業界の変化もありますが、当然、顧問先も大きく変化しています。膨大な情報による弊害や情報格差の拡大、相次ぐ規制緩和と企業経営に関わりの深い法の改正、 金融機関の急激な統廃合など、企業を取巻く環境も激変しています。大企業はリストラの成果で上昇トレンドに乗りましたが、 いま、そのしわ寄せが日本経済の礎である中小企業に来ています。中小企業は、声や行動に出せない悩みを多く抱えているのが現状です。
- 森永・・・あらゆるジャンルで格差社会は広がっているということですね。
- 太田・・・そうです。だから私は、これからの会計事務所は“会計事務所=税務顧問”から“企業経営のアドバイザー”になるべきだと思っています。3万の会計事務所と中小企業の距離が縮まることで中小企業が元気になり、 結果として日本経済の活性化と発展に繋がると思っています。
- 森永・・・それは言うならば、行政が取り組むべきテーマですよね。
- 太田・・・いま、日本の税理士の平均年齢は65歳です。これからも記帳代行などの業務はなくならないでしょうが、それだけでは生き残っていけません。今までの会計事務所は、税務・会計を見てあげて、月次試算表を作ってあげたり、その支援をしているだけで、顧問先は満足していたわけです。
- 森永・・・顧客のほうも、会計事務所は、要は税務対策をしっかりやってくれて、税金を安くしてくれればいいよ、としか思っていなかった、と。
- 太田・・・そうです。企業側から見た会計事務所の評価に、“税務顧問”があり、企業経営の一要素というものもありますが、それだけでは顧問先が満足しませんし、そこに大きな付加価値を見てくれていません。私は、企業のリアルな悩みやニーズを受信でき、それに応える窓口になれるのは企業に最も身近で唯一無二の存在である会計事務所だと確信しています。しかも会計の仕事というのは企業の心臓部に近い場所にいるわけです。会計事務所は、意識、無意識に関わらず、顧問先のさまざまな情報や社内事情を得ています。ただ残念ながら、そのことに、会計事務所自体が気がついていないんです。
- 森永・・・たしかにそうですね。私も気がついていなかったです(笑)。
- 太田・・・21世紀型の会計事務所の姿は、単なる税務顧問から、顧問先企業、とくに中小企業の悩みを受信し、具体的解決策の情報発信をするビジネス情報のアンテナへ変革すべきだと思っています。中小企業の活性化のためには、大企業と比べ地域格差や情報収集力格差の大きい中小企業に対して、タイムリーに有益な情報を届ける仕組みを構築し、活性化に繋げることこそが大切なんです。

- 太田・・平成18年2月、あんてな社を立ち上げました。あんてなという社名には「会計事務所がビジネス情報のアンテナへと変化して欲しい、そのような提案をしたい」という思いを込めました。私はあんてな社を通じて、会計事務所の社会的重要性を今まで以上に広く訴えていくつもりです。
- 森永・・・具体的にはどのような業務を展開されているのでしょうか?
太田・・第一弾として、 会計事務所を探している企業に対して、自事務所の得意業種・業務、サービス対応地域や事務所理念等の情報を体系だてて発信するWebサイトとして、「あんてなステーション」を昨年12月に開設し、会員募集を始めています。現在、会計事務所約500社のベーシック会員と呼んでいる無料会員と、50社のプレミアム会員と呼んでいる有料会員がいます。会員向けの情報誌の発行準備も進めています。会員向けといっても、会員が読むものではなく、顧問先である中小企業に持参する情報誌です。将来は職種別、業界別に発行し、顧客への情報提供メディアとして活用してほしいと思っています。情報を吸い上げる機能としてコールセンターも立ち上げました。
次に取り組んでいるのがソリューションプランナー機能です。私は“あんてな特派員”と呼んでいますが、会計事務所を訪問して、その顧問先企業のニーズを掘り起こし、情報を吸い上げる役割を担います。それが言うならばマッチング機能です。そして、多くの会計事務所をネットワーク化することで、さまざまな業種の情報を集積することができます。それを「あんてな社」のシステムに登録し、さらに、そのニーズや課題をどのように解決したかの事例を登録することで、会員全体が共有する「リアルな集合知」が形成されます。弊社はこれをデータベース化し、会員は明日訪問する顧問先と同じ業種・規模の企業に起こった課題解決の事例を会員間の垣根を越えた情報として引き出し、提供することができるのです。また、BtoBソリューションカンパニーは、リアルな顧客ニーズや動向を獲得でき、効率的でピンポイントな訴求活動が可能となります。この「リアルな集合知」を作るためには、弊社だけではなく、会員である会計事務所の皆さんが積極的に参加していただくことが、必要になります。
顧問先企業が必要としている情報の提供=マッチングがそこではじめて可能になります。会計事務所が、そして私どもあんてな社が、最終的にはソリューションのサポートができる情報(ソリューション企業)の提供をしたいと思っています。

- 森永・・・今の話の中で一番の付加価値は“特派員”の部分じゃないですか。マッチングのセンスがすばらしければ、ものすごく新しいものが次々に生まれてくると思います。
産業構造でいえば、日本はアメリカ型ではありません。アメリカは大企業の国、日本は中小企業の国です。日本と同じような産業構造で成功している国がイタリアです。たとえばブランドものの服をつくろうと思うと、専門技術をもつ中小企業が集められる。だれが集めるかといえば、イタリア語で“プロジェティスタ”と呼ばれる人間です。英語で言うプロジェクトマネジャー的な存在です。彼らは最後までそのブランドに関わるので、太田さんのおっしゃった役割とは少し違うかもしれませんが、共通した資質が必要だと思います。彼らにはどういう資質が求められるかというと、アメリカの教科書には“リーダーシップ”だと書かれていますが、イタリアでは“アート”なんです。マッチングで問われることは、その人間のセンス、感性ということです。これは機械ではできないことなので、アートなんですよ。 - 太田・・そうなんです! まさに森永さんがご指摘のとおりです。私は、会計事務所が、顧問先のためのビジネスマッチャーになるべきだと思います。ただ、私たちはアートの部分までは考えていませんし、経営コンサルタントの部分も無理だと思っています。コンサルタントとしての能力が必要ですし、会計事務所はそういう勉強はしてきていません。しかし、アンテナの役目を果たすことはできると思っています。顧客への「困っていることは何ですか?」という問いかけに対して、課題を明確にできれば、解決策が見つかります。インターネットで解決策をさぐることもできるわけです。
会計事務所はアンテナで十分だと思います。解決策を決めるのはあくまでも顧客です。あんてな社の商品は“情報”です。それを流すためのインフラを作ろうとしているのです。 - 森永・・・太田さんの構想しておられるビジネスモデルは、実は国なりが産業政策としてやるべき話かもしれない。でも、商工会議所の指導員ではできないし、銀行マンにもできない。まさに、“顧問先に行く”というインフラを持っている会計事務所だからできることですね。
ただ、かなりしぶとくやっていかないといけないでしょうね。1年、2年というレベルで考えないと結果が見えてこない事業だと思いますね。 - 太田・・最低2年はかかるかな。顧客に「あなたのために作ってきた情報ですよ」と言える、それを提供し続けることが大切だと思っています。
- 森永・・・でも一度、回りだせば回転はよくなっていくはずで、とても興味のあるビジネスモデルだと思いますよ。
- 太田・・最終目標は、5000社の会計事務所をあんてな社の会員にすることです。
- 森永・・・ぜひ頑張って下さい。今日は貴重なお話を、ありがとうございました。
- 太田・・こちらこそ、勇気づけられた気持ちです。会員(会計事務所)、顧問先企業、ソリューションカンパニー群、そしてあんてな社、その全てが喜びを分かち合えるビジネスモデルの構築を目指して頑張ります。ありがとうございました。
![]() | OAG税理士法人代表社員/株式会社あんてな 代表取締役会長太田孝昭(おおた・たかあき) ●1988年、東京国税局調査一部を退職、太田税務会計事務所(後:太田・細川会計事務所)所長に就任。社会福祉経営研究会(現:総合福祉研究会)会長、特定非営利活動法人富士山を世界遺産にする国民会議監事。特定非営利活動法人決算公告推進協議会副理事長。OAG税理士法人代表社員。株式会社あんてな代表取締役会長。 |
![]() | 経済アナリスト 森永卓郎(もりなが・たくろう) ●1957年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、日本経済研究センター、 経済企画庁総合計画局等を経て、91年から(株)三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)主席研究員に。現在は獨協大学教授。専門分野はマクロ経済学、計量経済学、労働経済、教育計画。難しい経済を切る、解りやすい語り口に定評がある。現在、ニッポン放送「森永卓郎と垣花正の朝はニッポン一番ノリ!」 のパーソナリティーとしても活躍中。ミニカー他、様々なコレクターとしても有名。 |








